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脳の働きをよくするビタミン・ミネラル

 脳の中では、数千億個ものニュートロン(神経細胞)が互いに手を伸ばしてからみ合っている。神経細胞の中を伝わる信号が隣の細胞に伝わるには、ドーパミンやノエルピネフリン、セロトニン、アセチルコリンなどの神経伝達物質が必要だ。神経伝達物質がなければ、脳の中に蓄えられた記憶が呼び出せなくなってしまう。

記憶力の維持には栄養状態が重要

 神経伝達物質がつくられるためには、ビタミン・ミネラルが必要である。記憶力の維持には、栄養状態が重要であるのだ。アメリカ人は十分な量の食事をとっているが、すべての人が正しい食生活を送っているわけではない。体に必要な栄養素の量は、所要量よりかなり多いと考える専門家もおり、所要量を満たしていれば大丈夫とはいい切れない。
 栄養たっぷりの食事をとっていても、体が栄養素を吸収していないこともある。高齢者の5人に1人は、ビタミンB12をうまく吸収していないとコロラド大学健康科学センター医学部内科教授のサリー・ステイブラー医博はいう。十分な栄養がとれないうえに、吸収が低下しているのであれば、物忘れは避けられない。

ビタミンB6の利点

 車のキーを置いた場所を忘れる。駐車した場所をわすれる。いつものガレージに駐車したことすら忘れてしまう。こういった物忘れは、ビタミンB6の不足であらわれる可能性があることがわかっている。
 ニューメキシコ州アルバカーキの中流家庭で生活する健康な高齢者を調べた研究では、ビタミンB6の摂取量が所要量(2mg)の4分の3未満の人が80%以上を占めた。
オランダの研究グループは、健康な高齢男性を2群に分けて一方にはB6を20mg、他方にはプラセボ(偽薬)を投与した。3ヶ月後に記憶力を調査して投与前の成績を比べたところ、長期記憶が特によく改善された。研究者らは、B6をとる価値があるという結論を出した。
 ネブラスカ大学医学部神経薬理学教授のマイケル・エバディ博士は、B6が記憶力を高めるには、それが神経伝達物質の合成を助けるからだという。

ビタミンB12で脳を活性化

 ビタミンB12の不足が原因で、物忘れや、失見当識(自分のおかれている状況がわからない)、疲労などの神経症状のある患者39名を対象とした研究では、ビタミンB12を投与するとすべての患者の症状が改善した。「B12が不足すると、足が熱く感じられたり、最近のことが覚えられなくなったり、計算力が衰えるなどの神経系の問題があらわれる」とステイブラー博士はいう。
 60歳以上の人の3分の1近くが、必要量のビタミンB12を体内に吸収できていないという。年をとると胃酸を分泌する能力がおちるため、食べ物を消化して栄養素を引き出せなくなるためだ。
 ビタミンB12は少量の乳製品や動物性タンパク質をとれば十分な量を確保できるため、消化管が問題なく働いている人にB12不足があらわれることはまれだ。肉や乳製品をまったくとらない食事をつづけるとB12が不足する危険性があるが、数年間にわたって動物性食品を断たない限り欠乏症があらわれることはないとステイブラー博士はいう。

B1、B2も忘れてはならない

 ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)といったB群のビタミンがごくわずか不足しただけでも、思考や記憶力が低下することがある。米国農務省が60歳以上の健康な被験者28人を対象として行った研究では、ビタミンB1濃度の低い被験者の脳の活動は低く、B1濃度が高い被験者の記憶力は比較的よいという結果が出ている。
 ビタミンB1不足は、気分の変動や、漠然とした不快感、恐怖、思考の乱れやうつ病の症状を引き起こすことがある。これらの症状も記憶力を低下させることが知られている。
 ビタミンB1は少量で威力を発揮する。ある研究では、B1の摂取量を1日0.33mgまで減らした女性はいらいら、疲れや非社交的態度がみられたが、1日1.4mgに増やすと症状が改善された。

レシチンをとると脳内神経伝達物質が増える

 レシチンには、脳内の子りんをふやす働きがある。脳内のコリンが増えれば、アセチルコリンと呼ばれる記憶力の維持に必要な神経伝達物質が多くつくられる。
 フロリダ大学の社会福祉・老年医学教授のフローレンス・サフォード博士は、50〜80歳の被験者61人を2群に分け、一方に1日に大さじ1杯のレシチン、残る20人にプラセボを投与した。5週間後、レシチンをとった被験者では記憶力テストの成績が大幅に改善し、覚え違いの頻度がプラセボ群より低かった。
 また博士は、117人の被験者35〜50歳、50〜65歳、65〜80歳の3群に分けた。各群をさらに2つに分け、一方にレシチンを1日に3.5mg、もう一方にプラセボを投与した。3週間後、レシチンをとった被験者では、覚え違いの頻度がプラセボ群のほぼ半分に減った。
 「レシチンは早く効くのが魅力だ。レシチンはアルコールと同じように血液脳関門を通過して、すばやく効果を発揮する」と博士はいう。血液脳関門とは、血液中に有害な物質が入っても脳には届かないようにする関所のようなもので、脳内には特定の物質しか入らない仕組みになっている。

鉄と亜鉛で思考力がアップ

 鉄と亜鉛が記憶力を高めることを示す研究がある。
 ある研究では、鉄と亜鉛の濃度が低くなりやすい18〜40歳の女性34人を対象に、鉄と亜鉛が短期記憶に及ぼす影響が調べられた。被験者には亜鉛30mg、鉄30mg、鉄30mgと亜鉛30mgの併用、またはほかの微量栄養素も含むサプリメントのいずれかを投与しいて知能検査を行った。亜鉛または鉄をとった被験者では短期記憶が15〜20%向上した、とテキサス大学ガルベストン校医学部の予防医学。地域保健学部教授のハロルド。サンドステッド医博はいう。
 言葉による短期の記憶力は、鉄のサプリメントで改善され、視覚の短期記憶は、亜鉛と鉄のいぜれでも改善された。

ビタミン・ミネラル目標摂取

栄養素 目標摂取量
ビタミンB1(チアミン) 1.5mg
ビタミンB2(リボフラビン) 1.7mg
ビタミンB6(ピリドキシン) 2.0mg
ビタミンB12(コバラミン) 6.0μg
鉄(Fe) 18mg
亜鉛(Zn) 15mg
 
 
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